工学部メールマガジン[第31号]2020年10月配信

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                静岡大学工学部 [第31号] 2020年10月 配信
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  ☆☆☆ 第31号発行 ☆☆☆
  このたび,メールマガジン第31号を発行いたしました.
  本メールは,静岡大学工学部の近況についてお送りします.
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┃ 1. 【特別寄稿】

┃ 2. 【工学部のNews & Topics】

┃ 3. 【工学部の研究紹介】

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[1] 【特別寄稿】
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文部科学大臣表彰における科学技術賞(研究部門)の受賞に寄せて

学術院工学領域 電子物質科学系列 教授 小野 行徳

 電子工学研究所の小野行徳(ゆきのり)と申します。この度、「文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)」という栄えある賞を頂きました。このことについて何か書いてほしい、とお願いされましたので、私の研究内容などをご紹介したいと思います。私は、1963年(昭和38年)に御殿場市の隣にある小山町というところで生まれました(今年で57歳になりました)。生家は、歩いて5分で神奈川県という県境にありますが、一応、静岡県生まれです。早稲田大学を卒業後、NTT(神奈川県)に入社、その後、富山大学を経て、2016年に地元の大学(といっても小山町とは真逆の西端ですが)にご縁あって着任しました。場所はいろいろ変わりましたが、一貫して「超低消費電力デバイス」の研究を行っています。スマホで動画を見ているとスマホが少し温かくなる(温度が上がる)ことにお気づきの方もいらっしゃると思います。これは電子機器の構成部品であるトランジスタが大量の熱を放出しているためで、このことが電子機器の性能向上を阻害する主要因となっています。私の研究テーマは、この「熱の発生と放出」という電子機器につきまとう本質的な問題を如何にして解決するか、というものです。
 今回の受賞対象となった業績は「電子‐電子散乱と電子流体のデバイス応用に関する先駆的研究」というもので、新しいデバイスコンセプトの提案とその低消費電力性の実証に関するものです。そのようなデバイスの一例が、私たちが「エレクトロン・アスピレーター」と名付けた新原理デバイスです(図をご参照下さい)。アスピレーターとは、入口と出口の他にもう一つの吸込み口を持つ T 字管のことで、入口を水道の蛇口へ、出口を排水口へ接続し、蛇口から勢いよく水を流すと、吸い込み口から液体や気体を引き込み排水口へ流すことができるデバイスです。動作のための電力が不要なため、化学の実験において液体や気体をポンピングするときなどに、簡便に使用されています。私たちは、ナノメートルサイズ(1ナノメートルは10-9メートル)の極微なトランジスタにおける電子の流れ(電流)でも類似の現象が起こることを見出しました。また、この発見に基づきエレクトロン・アスピレーターを開発し、電力供給なしに(付加的な熱の発生なしに)トランジスタの電流を増幅することに成功しています。
 新原理デバイスの創生には、新しい現象の「発見」が不可欠です。研究をしていると、理解できない実験データが毎月のように出てきます。そしてその多くはその原因すら特定できず、あるいは特定できたとしてもあまり重要でないことが判明してしまいます。これらのデータの中から、本質を見極め本当に重要な発見を見逃さないためには、幅広い知識はもちろんですが、個々の研究者の美意識や哲学も重要になってきます。実験結果を予想するとき、「こうであったら美しいなぁ」とか、「こうあるべきだ」という思い込みや信念が、発見には重要だと思います。その意味で、研究者には芸術家に近い感覚が必要だと思っています。私自身、芸術家肌ではありませんが、なるべくそのような感覚を持てるようにと、日々心掛けています。
 これからも、静岡大学、さらには我が国の科学技術の発展のために、微力ながら尽力していきたいと考えています。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
 
 
 図:エレクトロン・アスピレーターの電子顕微鏡写真
 

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[2] 【工学部のNews & Topics】
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 ■ 新任教員の紹介

学術院工学領域 化学バイオ工学系列 助教 三宅 浩史

 2019年4月に工学部化学バイオ工学科に着任した三宅 浩史(みやけ こうじ)です。出身は、兵庫県北部の城崎という温泉街が有名な街になります。高校までは地元で過ごし、大学は大阪大学基礎工学部に進学しました。その後、大阪大学基礎工学研究科物質創成専攻化学工学領域に進学し、2019年3月に博士号を取得しました。研究内容としては、ゼオライト、カーボン、金属有機構造体(Metal Organic Frameworks: MOFs)を中心とした高機能性ナノ材料の開発を行っています。これらの材料に対して、ナノレベル(=分子レベル)での設計や制御を行い、従来では得ることができなかった機能の発現や効率化を図っています。そして、最終的には、開発した高機能性ナノ材料を用いた次世代の化学プロセスの構築に貢献したいと考えております。これから、研究活動および教育活動に対して勢力的に取り組み、静岡大学に貢献したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。


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 ■ 学生サークル活動

・天文サークルSACLA

天文サークルSACLA 角田 一星

初めまして!天文サークルSACLAです!
 うちの大学に天文サークルなんてあったんだ~と思った方もいらっしゃるかもしれません。実は今年で活動10周年にもなる意外と長いサークルなんですよ!これまでは非公認サークルとして活動してきて、今年から晴れて公認サークルとなったため知名度が活動歴に比例していないという特徴があります(笑)今回はサークルを紹介する貴重な機会ですので張り切って紹介させていただきます。
 現在は男子17人,女子7人の計24人で活動しています。情報学部と工学部の割合はちょうど1:1でバランスの良い?配分です。
 普段は大学の敷地内や屋上、和地山公園などで季節の星座や惑星、星雲、星団、人工衛星、流星群や日食、彗星などの天体イベントの観望会を行って活動しています。つい先日にはペルセウス座流星群があり、たくさんの流れ星をみんなで一緒に見てとても盛り上がりました。「一瞬で流れてしまう流れ星に願い事を3回唱えるなんて無理だよね」なんてことを話していたら、「なるべく短い言葉で効果の高いことを言うべきだから、『カネ、カネ、カネ』が期待値高い」だなんて夢のないことを1年生の女子が話していて大笑いしてしまいました。というわけで、どこまで行っても科学的に考える、そんな人達が集まって楽しくやっているサークルです。
 最近はコロナの影響で行けていないですが、有名な星空スポットへ遠征に行ったりキャンプの計画を立てたりもします。また、浜松RAIN房さんという地域の子供達に向けて科学教室を行っている団体があるのですが、そちらの天文講座をお手伝いさせて頂いてもおります。他にも直径340mm,全長2m近くになる大型のドブソニアン望遠鏡をレンズを削り出すところから作成している最中です。詳しい活動内容につきましては下部のサークルホームページやTwitterをご覧になってください。
 僕は大学に入学したとき、見て分かる星座など一つもなく、天文のことはほとんど知りませんでした。しかしこのサークルに入り、色々な星座を覚え、また逸話を知り、望遠鏡や双眼鏡を向けて今まで知らなかった天体の姿を知るにつれて、星空をどんどん楽しめるようになっていきました。普段見慣れた何気ない日常の景色でも、自分が興味を持って目を向けて見ると、世界はどこまでも楽しむことができるのだということを僕は学びました。普段帰り道に見る星空が今では以前よりも輝いています。
 そんな天文学の楽しさ、面白さを学び、広めていくのが僕たち天文サークルSACLAの活動です。今後も楽しい活動ができるよう励んで参りますので、ご協力よろしくお願い致します。最後までお読みいただきありがとうございました。

【Twitter】https://twitter.com/Hamamatsu_SACLA
【ホームページ】https://shizuhamaten.wixsite.com/sacla



活動風景


茶臼山高原 総合棟屋上

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[3] 【工学部の研究紹介】
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学術院工学領域 機械工学系列 教授 トリパティ・サロジ

 電波と光は我々の身近で利用されておりますが、電磁波スペクトルでは電波と光の中間に位置している電磁波はテラヘルツ波として知られております。一般的には100GHzから10THz までの周波数領域はテラヘルツ帯と呼ばれ幅広い分野で応用が期待されております。テラヘルツ波は可視域では不透明な物質(セラミック、ポリマー、紙、布、プラスチックなど)を透過します。更に、水に非常に敏感でテラヘルツ領域では蛋白質、糖類などの高分子固有の吸収を有します。また、X線に比べてフォトンエネルギーが低いため人体への影響が少ない電磁波としても知られています。テラヘルツ波はこのような特徴を有するためバイオ・医療検査、非破壊・非接触検査、そして次世代情報通信(Beyond 5G/6G)などの分野で注目を浴び,世界中でテラヘルツ光源、検出器そして様々な分野で研究開発が活発になってきております。我々の研究室では高出力テラヘルツ光源の開発から応用研究、例えば非破壊検査、生体計測などに関する研究を行っております。主な研究テーマは以下のとおりであります。
1. テラヘルツ時間領域分光法を用いた様々な物質の測定:我々の研究グループでは光伝導アンテナをフェムト秒レーザー(波長:780 nm、パルス幅:100 fs、パワー:20 mW)により励起することでテラヘルツ波の発生・検出しテラヘルツ時間領域分光・イメージングシステムを構築しております(図1)。この分光器は約100 GHzから3.5 THzまでのスペクトルをカバーでき様々物質(ポリマー、半導体、薬品、農薬など)を測定することが可能です。更にシリコンプリズムを利用することにより全反射減衰テラヘルツ分光測定も可能で、生体計測に関する研究も行っております。 


図:テラヘルツ時間領域分光器(透過型光学系)

2. テラヘルツ波用光学素子の開発: 我々の研究室ではらせん構造を持つ金属材料を利用したテラヘルツ波用フィルタやポラライザなどの研究しております。このような素子はテラヘルツ偏光分光測定や次世代テラヘルツ波通信システムに必要とするため低価格・高性能光学素子の研究開発を進めております。
3. 高出力テラヘルツ光源の開発: 近年ファイバー結合型テラヘルツシステムの重要性が高まってきており、我々は非線形光学結晶(主に有機結晶DAST、OH1 など)を高出力フェムト秒ファバーレーザー(波長:1550 nm、パルス幅:70 fs、パワー:80 mW)で励起することによる高出力テラヘルツ光源の研究開発を行っております。
我々の研究室では今まで蓄積した知識、経験やノウハウのもとテラヘルツ波を用いた様々な応用分野、例えばテラヘルツ分光、イメージングや生体計測に関する研究を推進していきたいと考えております。

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       ~最後までお読みいただきありがとうございました~

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【静大工学部メールマガジン】

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