工学部メールマガジン[第36号]2023年4月配信

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静岡大学工学部 [第36号] 2023年4月 配信
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  ☆☆☆ 第36号発行 ☆☆☆
  このたび、メールマガジン第36号を発行いたしました。
  本メールは、静岡大学工学部の近況についてお送りします。
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┏ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┃ 1. 【特別寄稿】

┃ 2. 【工学部のNews & Topics】

┃ 3. 【工学部の研究紹介】

┃ 4. 【お知らせ】

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[1] 【特別寄稿】
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工学部長就任のご挨拶

工学部長 福田充宏
 

 令和5年4月より工学部長を務めます福田充宏と申します。静岡県磐田市出身で、静岡大学大学院修士課程を修了し、(1年だけなのですが)民間企業の勤務を経て静岡大学に戻り、36年が経ちました。ドクターは論文博士を京都大学で取得し、(これも1年ですが)在外研究員制度を使って米国メリーランド大学に行っていました。専門は流体工学の1部門である流体機械工学で、特に冷凍空調装置に用いられる圧縮機や冷凍空調装置内の流動、伝熱、潤滑、機械挙動、それらに関わる測定技術などを対象にして研究をしています。
 さて、工学部は静岡大学の中で最も大きな学部であり、令和4年には、前身である浜松高等工業学校の1922年の設立から数えて100周年を迎えました。昨年9月24日には浜松キャンパス100周年記念式典も催され、名古屋大学の天野先生の記念講演も行われました。100周年記念事業に対する寄附金も多くの方や企業から賜り、この場を借りてお礼申し上げます。
 静岡大学及び工学部を取り巻く状況は、浜松医科大学との統合再編問題など、多くの課題を抱えています。工学部は平成25年に改組をしてから10年が経ちますが、工学教育はこれまでの基礎的な内容を残しつつ、データサイエンスやDXなど、新たな技術革新に対応できる内容を取り入れていかねばならず、教育内容の見直しに伴う学科構成の見直しや1学科制への移行も検討されています。その他、学部-修士連携プログラムの開始など、これまで浜松医大との統合再編を見据えて控えてきた様々な大学改革を行っていかざるを得ません。いろいろな改革や組織変更には痛みも伴いますし、エネルギーが必要です。私は強いリーダーシップで組織を引っ張っていくタイプのリーダーではありませんので、いろいろな方々にご協力いただきながら、時には勇気を持って決断しながら改革を進め、次の100年に向けてのスタートとしたいと考えています。
 新型コロナウイルス感染症が5類に分類されるのに伴って、キャンパス内ではその影響も薄れ、講義はほとんどが対面となっています。また、一部ではオンラインの講義も普通に行われるようになりつつあり、その点では、新型コロナウイルス感染症によって新たなツールを得ることができたと言えます。新型コロナウイルス感染症が拡大した1年目に入学した学生はこの4月から4年生になりますが、学生を見ていると、いろいろな伝統や行事などが途絶えてしまっている、と感じることも多くあります(駅伝大会もなくなったままです)。昨年度は3年ぶりにテクノフェスタも対面で開催いたしました。途切れてしまった伝統なども少しずつ取り戻し、学生たちが活き活きと充実した学生生活を送れるようなキャンパスにしていきたいと思います。
 今後ますますいろいろな組織との連携が必要になり、組織も複雑になることが予想されます。まずは学生が充実した学生生活を送れること、(特に若い)教員が活き活きと研究活動が行えることに注力しながら、静岡大学工学部の存在感をアピールするため、新たな魅力を発信できるようにがんばって参ります。今後とも皆様のご協力、ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

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[2] 【工学部のNews & Topics】
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 ■ 新任教員の紹介

学術院工学領域
機械工学系列
准教授 川﨑 央

 
 2022年10月に工学部機械工学科に着任した川﨑央(かわさき あきら)です。千葉県出身で、2016年に東京工業大学 大学院総合理工学研究科 博士後期課程を修了後、宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)、および、名古屋大学 航空宇宙工学専攻を経て、浜松へ参りました。赴任に際して、気候の穏やかな静岡は人柄も穏やかであると聞き及びました(実際に静岡出身の友人知人を思い返すと皆さん穏やかです)が、加えて、特に遠州地域は、地域性としてチャレンジ精神が旺盛であるとも伺いました。心安らかに研究に集中するには正にうってつけの当地で受け入れていただけたことを大変幸運に思います。
 専門は主として航空宇宙工学、中でも推進工学で、これまで、電磁プラズマ力学(magnetoplasmadynamic, MPD)スラスターや回転デトネーションエンジン(rotating detonation engine, RDE)といった推進機、ならびに、電磁流体力学(magnetohydrodynamic, MHD)発電機の研究に携わってまいりました。いずれも、激しい放電や燃焼に起因する極限的な熱・流体現象を利用する装置であり、その実用化には様々な困難が伴うものの、先端的な航空宇宙技術として実現が望まれています。一例としてRDEについてもう少しだけ説明を加えさせていただきます。RDEは、デトネーション(爆轟)という最も激しい部類の特殊な燃焼現象を利用しようとする熱機関ですが、そのデトネーションは、衝撃波を伴って燃焼が超音速で伝播するという著しい特徴を有します。このことから、高速燃焼による燃焼器の小型化、および、衝撃波圧縮による前段圧縮機の簡素化などが期待されており、これらは、航空宇宙用の推進機としては大きなメリットになります。下の写真は、作動中のRDEの排気プルームです。前職の名古屋大学では、世界初の宇宙での作動実証実験(https://www.imass.nagoya-u.ac.jp/research/20210819__kasahara.html)にも携わりました。

 静岡大学では、上記の先端的な航空宇宙技術の研究を更に深化させ、未来に革新をもたらすべく精進したいと思います。また、教育の面では、私自身が率先して学び、そして挑戦することで、研究室や講義室で時間を共にする後進の皆さんに良い刺激を与えられるように尽力したいと思います。また、深い洞察に基づいて現象を理解すること、創意工夫を凝らしてモノを作り出すことの楽しさを共有できればと思っています。これらの過程で、静岡大学ならびに地域社会・産業に貢献ができれば幸甚の至りです。どうぞよろしくお願いいたします。

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■ 在外研究だより
教員特別研修を終えて

学術院工学領域
化学バイオ工学系列
助教 佐藤 浩平

 
 筆者は本学の教員特別研修制度を利用して、ペンシルベニア大学化学科に留学する機会を得ました。この制度は、常勤教員が一定期間研究に専念できるよう、国内外の大学や公的研究所等の研究機関で長期(6~12か月)もしくは短期(概ね3か月以内)の研修を実施できるものです。2020年4月から一年間の長期研修に申請し採択されましたが、新型コロナウイルスのパンデミックによりしばらく延期となり、2022年3月に二年越しで渡米することができました。
 ペンシルベニア大学はアメリカペンシルベニア州フィラデルフィアにある総合大学で、アイビーリーグの一角を担う名門校の一つです。筆者がお世話になったのはE. James Petersson先生の研究室で、分子生物学、物理化学、合成化学、計算科学、細胞生物学などの幅広い分野の技術を利用して、生体高分子のひとつであるタンパク質を対象とした研究を精力的に進めています(http://peterssongroup.chem.upenn.edu/EJPLab_Home.html)。筆者の専門はタンパク質を対象とする合成化学で、「どうやってつくるか?」を研究課題として設定することが多く、「つくったものをどうやって使うか?」をPetersson研究室で学べたことは大変意義深いことでした。また、実験技術として大腸菌を使ったタンパク質発現技術を学ぶことができ、筆者の合成技術と組み合わせることで様々な機能性タンパク質をつくることができる「タンパク質半化学合成」を習得できたことは、今後自身の研究の幅を広げていくための大きな財産になったと確信しています。

写真1.グループ写真

 Petersson研究室は大学院生が主体の研究室で、学生さんと一緒に研究を進めました。生化学的な実験が得意な学生さんとペアになって、お互いに知識を交換し合いながら研究できたことは英語で研究指導をする経験として大変貴重なものとなりました。学生さん一人一人の自律性が高く、教員と学生というよりも共同研究者としての関係性の中で研究室が運営されている雰囲気が印象的でした。
 生活面では、COVID-19の影響が強く残る2022年春に渡米したため、出国時のPCR検査やキャンパス入構のためのワクチン接種・陰性証明など平常時にはない経験をしました。渡米当時は、毎朝大学のサイトにログインして体調についての記録を付け健康であると判定されないと建物入口のカードキーが機能しないようなシステムが導入されており、厳密に管理されていましたが、夏前にはこのシステムも廃止となり建物内でのマスク着用義務も撤廃されるなどwithコロナに向けて明確に動き出しました。非常時にうやむやな対応をせず、明確な指針を示す点でアメリカの力強さを感じました。このような社会の流れもあって、研究室でのバーベキューやクリスマスパーティーなどのアクティビティも開催できるようになり、夏以降はCOVID-19の影響をほとんど感じない生活を送ることができました。
 
写真2.クリスマスパーティーでプレゼント交換する筆者

 ここまで思いつくままにアメリカでの思い出を記してきましたが、今回の研修は多くの方々の支援のもと実現できたものです。研修で研究室を一年間不在にするにもかかわらず快く送り出していただきました間瀬暢之先生、Petersson先生に筆者を紹介していただき、また研修で不在の間に学生実験を担当いただきました鳴海哲夫先生にこの場を借りて御礼申し上げます。また、多くの励ましの言葉をいただきました化学バイオ工学系列の先生方、情勢が見通せない中で海外出張をお認めいただきました工学部長 喜多隆介先生に深く感謝申し上げます。最後に、筆者の拙い英語にも正面から向き合ってくれたPetersson研究室の素晴らしい仲間たちと、知識・技術を惜しみなく共有してくれただけでなく教育者としての哲学をその背中でみせてくれたPetersson先生に心より御礼申し上げます。
 今回の研修で得た経験を教育・研究に最大限生かして、今後の工学部の発展に微力ながら貢献できるよう尽力する所存です。今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

写真3.帰国前の空港にて(左:Petersson先生、右:筆者)

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■ 静岡大学ボランティアサークル AMIS 活動報告

2022年度代表 電気電子工学科 上久保 岳

 
 みなさんこんにちは。2022年度のAMIS代表を務めておりました上久保岳と申します。今回の工学部メールマガジンにて弊サークルについて記載する機会を頂くことになったため、サークル紹介並びに活動報告をさせていただきます。
 AMISでは現在下記4つの活動を軸に活動しています。

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*学習支援
 主に支援を要する家庭や障害等により苦しむお子さんを対象に学習や遊びを通じて貢献していく活動となります。活動を主催する一般社団法人 みらいTALK さんを中心に、浜松医科大学さんやその他複数の大学さんとも協力しながらの活動です。
 今までは週に2回、水曜日の浜北会場と木曜日のひくま会場で行われていましたが、2022年度より、火曜日の幸の会場が増え週3回の活動となりました。
 また、新型コロナウイルスの影響でしばらくイベントがありませんでしたが、昨年の11月に久しぶりのイベントとしてラグビーの体験会が開催されました。普段教えているこどもたちが喜ぶ姿を見ることができ、私たちにとっても充実した活動となりました。

*遊びの会
 月に1度進級祝いや鬼ごっこ、アイスクリーム作り等、子供たちを楽しませる企画を考えて子供たちと全力で遊びます。元気な子供たちと遊ぶことで、私たちも元気になれる活動となっています。

*ゆるスポ
 運動を苦手とする子供や、発達障害を持つ子供達とのバドミントンを通じてのソーシャルスキル向上支援活動です。

*献血呼びかけ
 年に4回、ティッシュ配りをしながら献血の呼びかけ、献血をしていただいた方への接遇を行います。血液を治療に必要とする方は後を絶えない現状で、少しでも多くの人に献血に協力していただけるように活動していきます。
日本赤十字さんが主催する学生献血推進ボランティアに参加する形で、聖隷クリストファー大学さんと共に活動を行っています。

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 参加日等、活動の程度は各個人の自由となっていますが、それぞれ充実した活動であるため、積極的な参加があります!
 ボランティアを通じて出会う人たちは優しい方がほとんどで、私たちも楽しみながら活動ができ、その活動の中で誰かの為になることが出来ていればとても嬉しい限りです。これからも有意義な活動が出来るよう、サークルを作っていけたらと思います。
 下記にサークルツイッターのアドレスを記載させていただきます。また、昨年度の献血呼びかけにおける写真を掲載します。
最後までお読みいただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


Twitter:https://twitter.com/AMIS98445408


写真1:クリスマスキャンペーン
聖隷クリストファー大学さんとの集合写真

写真2:クリスマスキャンペーンでの活動の様子

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 [3] 【工学部の研究紹介】
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「シリコンと金属周期構造を利用した高度な光検出に関する研究」

電子物質科学系列 佐藤 弘明
 

 シリコンのトランジスタやフォトダイオードのような半導体デバイスは、高速演算回路やイメージセンサー等のようにデバイス集積型の小型装置として発展し、身の回りの装置に多数組み込まれています。これまではデバイス単体の縮小化によってそれらの性能向上が行われてきましたが、ナノメートル程度の寸法に到達してからは縮小化が困難となり、新しい動作原理を導入することで性能を向上させる研究が行われています。
 我々はシリコンのフォトダイオードにおいて、表面プラズモンと呼ばれる金属周期構造の近傍に張り付く特殊な光(近接場光)を利用した光検出器を開発しています。表面プラズモンを励起するためには複数の入射条件(光の波長、偏光、入射角等)を同時に満足する必要があるため、入射条件や金属周期構造の周辺のわずかな環境変化を高精度に捉えることができます。
 応用例を挙げますと、一つは光の入射角を検出する角度敏感画素(angle-sensitive pixel: ASP)と呼ばれるデバイスです。通常は目的の物体に焦点を合わせて画像を撮影しますが、撮影した画像データに入射角の画素情報も含まれていると、別の物体に焦点を合わせた画像に再構成できることが知られています。現在はASPとしての原型を開発した段階で、応用範囲については今後検討を重ねることにしています。もう一つの例は、光学バイオセンサーとしての応用です。光学バイオセンサーは生体分子同士が結合した際のわずかな屈折率変化を捉えるもので、蛍光標識を不要とするため、種々の生体分子に適用できる汎用性に優れています。
 我々は最近、シリコンのフォトダイオードと金属の回折格子を近接させることで、代表的な光学バイオセンサーと比肩しうる精度で屈折率変化を計測できることを示しました。一方で、光学バイオセンサーは原理的にある面積に存在する多数の生体分子の結合を総合的に検出しているので、結合の有無を計数するということは困難です。計数ができると生体分子間相互作用の挙動を分析できると考えられるため、どのようにしたら計数が可能となるかについて検討しています。

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[4] 【お知らせ】
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■学位授与式
 新型コロナウイルス対策の為、人数制限等もあったものの、3月23日(木)に対面で開催されました。吹奏楽団の演奏後に、日詰学長から情報学部代表および工学部代表の学生に学士の学位記が授与され、その後大学院修了生代表者に修士および博士の学位記が授与されました。卒業生は728名、修士課程は356名、博士後期課程は15名でした。



■HPリニューアル
 工学部HPは、これまでよりPCでもスマートフォンでも見やすく、明るいイメージとなるよう4月上旬にリニューアルしました。是非ご覧ください。
 
https://www.eng.shizuoka.ac.jp/

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      ~最後までお読みいただきありがとうございました~

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【静大工学部メールマガジン】

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